EconThought News - 講演会 「"経済"を審問する――アラン・カイエとともに」 (東京外国語大学/東京日仏会館)
http://www.tufs.ac.jp/info/events.html#100212
http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/doc/10011301.pdf
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●アラン・カイエ講演会(同時通訳あり)
日時:2010年2月12(金)
時間:18:00〜19:30
司会:西谷修(東京外国語大学大学院教授)
講演:Alain Caillé(パリ第10大学教授、MAUSS代表)
●ラウンド・テーブル(同時通訳あり。)
日時:2010年2月13(土)
時間:13:00〜17:00
ゲスト:アラン・カイエ
討議者: 渡辺公三(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)
西谷修(東京外国語大学大学院教授)
真島一郎(東京外国語大学AA研准教授)
マルク・アンベール(日仏会館フランス側館長)
司会:中山智香子
会場:東京日仏会館
【カイエ紹介】
アラン・カイエ(Alain Caillé, 1944- )
現在パリ第10大学(ナンテール)社会学教授で、「経済・組織・社会」の博士
コースを指導するとともに、SOPHIPOL(政治的・社会学/哲学/人類学ラボラト
リー)の共同代表を務めるが、なにより雑誌MAUSS(Mouvement
Anti-Utilitariste dans les Sciences Socials 社会科学における反功利主義運
動)の創始者にして主幹として知らる。
モース雑誌(La revue du MAUSS)は、社会科学と政治哲学を学際的に横断する
研究誌として1981年に創刊され、Editions La Découverte から刊行されるとと
もに、ウェヴサイト(www.revuedumauss.com)も展開し、近年は活発な議論のた
めのジャーナル・サイト(www.journaldumauss.net)も設けている。
【企画趣旨】
わたしたちが現在MAUSSにあらためて注目するのは、この知的運動体がすでに四
半世紀以上にわたって、現代の経済主義的社会統治の原理的批判を展開し、オル
タナティヴ理論の共同的練成に向けてたゆまぬ活動を続けてきたからです。
2008年秋以降の世界経済危機は、たんにアメリカ式金融システムの破綻、ある
いは新自由主義的統治イデオロギーの失墜というにとどまらず、さらに長い射程
で、産業システムを軸とした経済主義的社会形成全般の危機を露呈したものと見
ることができます(ここで資本主義という用語をあえて避けるのは、事態を資本
主義/社会主義あるいは右派/左派といった、歴史的負荷の大きい硬直した理論
的枠組みの中に落とし込んでしまわないためです)。
現在の経済危機の淵源とみなされる70年代初頭のドルの変動相場制への移行
は、アメリカに新自由主義を台頭させ、これがやがて英米で主導権をとって以
来、情報革命と「壁の崩壊」による市場一元化を通してグローバル化のイデオロ
ギーとなり、市場原理主義を世界に広めました。その結果、政治が後退する経済
主義的な世界統治が語られもしましたが、ただしこの統治システムは「テロとの
戦争」という超国家的「安全」保障体制を要請していました。そしてわれわれが
現在目の当たりにしているのは、この新たな戦争レジームと新自由主義的統治の
二重の破綻です。付言するなら、経済と軍事のカップリングによって政治をはじ
き出そうとしたこのグローバル世界統治システムとは、植民地支配として展開さ
れた産業化以後の西洋主導の世界化プロセスを、アメリカ的「自由」のイデオロ
ギーによって更新し、永続化するための装置だということです。
けれども、振り返ってみればその端境のころ、つまり1970年代初頭から、産
業・経済主義的社会組成に対する根本的な異論や批判が現れてきていました。す
でにK・ポランニーの市場経済批判がありましたが、N・ジョージェスク=レー
ゲン、I・イリッチらが登場し、正統的経済学(新古典派)や経済主義的ヴィ
ジョンを支えていた「成長神話」が批判されるようになります。フランスではア
ンドレ・ゴルツやフランソワ・パルタンなどが、多様な角度からの批判が展開し
ました。
その流れを受けて、たんに新しい経済学を構想するのではなく、経済学を軸と
した社会科学全般に浸透する「功利主義」そのものを審問して、人間社会を考察
する別の知の方法を人文・社会科学の横断的な共同作業によって練成しようとい
う目的で創設されたのがMAUSSです。いうまでもなくこの命名は、西洋近代の経
済観念に「贈与」の概念で異論を突きつけたM・モースの名にかけられています。
わたしたちの科研グループでは、経済や政治が根本的に問われているこの時期
に、すでに必要な方向に向けて四半世紀の活動を展開してきたMAUSS代表のアラ
ン・カイエ氏を招き、その経験と成果について報告を受けるとともに、日本の関
係者、関心を共有する方がたと議論の機会を作ることにいたしました。
(文責:西谷)
Alain Caillé 主要著作―――――――――――――――――――――――――――――――
Théorie anti-utilitariste de l'action:Fragments d'une sociologie
générale, Editions La Découverte, 2009.
Don, intérêt et désintéressement:Bourdieu, Mauss, Platon et quelques
autres, Editions La Découverte, 2005.
Dé-penser l'économique:Contre le fatalisme, Editions La Découverte, 2004.
Critique de la raison utilitaire, Editions La Découverte, 2003
The World of the Gift, Mcgill Queen’s University Press, 1999.
主催:科学研究費プロジェクト(「戦争・経済・メディアから見るグローバル世 界秩序の複合的研究」(研究代表者:西谷修))
共催:『マルセル・モース研究―社会・交換・組合』(AA研共同研究プロジェクト)
会場提供:東京日仏会館フランス事務局
http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/doc/10011301.pdf
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●アラン・カイエ講演会(同時通訳あり)
日時:2010年2月12(金)
時間:18:00〜19:30
司会:西谷修(東京外国語大学大学院教授)
講演:Alain Caillé(パリ第10大学教授、MAUSS代表)
●ラウンド・テーブル(同時通訳あり。)
日時:2010年2月13(土)
時間:13:00〜17:00
ゲスト:アラン・カイエ
討議者: 渡辺公三(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)
西谷修(東京外国語大学大学院教授)
真島一郎(東京外国語大学AA研准教授)
マルク・アンベール(日仏会館フランス側館長)
司会:中山智香子
会場:東京日仏会館
【カイエ紹介】
アラン・カイエ(Alain Caillé, 1944- )
現在パリ第10大学(ナンテール)社会学教授で、「経済・組織・社会」の博士
コースを指導するとともに、SOPHIPOL(政治的・社会学/哲学/人類学ラボラト
リー)の共同代表を務めるが、なにより雑誌MAUSS(Mouvement
Anti-Utilitariste dans les Sciences Socials 社会科学における反功利主義運
動)の創始者にして主幹として知らる。
モース雑誌(La revue du MAUSS)は、社会科学と政治哲学を学際的に横断する
研究誌として1981年に創刊され、Editions La Découverte から刊行されるとと
もに、ウェヴサイト(www.revuedumauss.com)も展開し、近年は活発な議論のた
めのジャーナル・サイト(www.journaldumauss.net)も設けている。
【企画趣旨】
わたしたちが現在MAUSSにあらためて注目するのは、この知的運動体がすでに四
半世紀以上にわたって、現代の経済主義的社会統治の原理的批判を展開し、オル
タナティヴ理論の共同的練成に向けてたゆまぬ活動を続けてきたからです。
2008年秋以降の世界経済危機は、たんにアメリカ式金融システムの破綻、ある
いは新自由主義的統治イデオロギーの失墜というにとどまらず、さらに長い射程
で、産業システムを軸とした経済主義的社会形成全般の危機を露呈したものと見
ることができます(ここで資本主義という用語をあえて避けるのは、事態を資本
主義/社会主義あるいは右派/左派といった、歴史的負荷の大きい硬直した理論
的枠組みの中に落とし込んでしまわないためです)。
現在の経済危機の淵源とみなされる70年代初頭のドルの変動相場制への移行
は、アメリカに新自由主義を台頭させ、これがやがて英米で主導権をとって以
来、情報革命と「壁の崩壊」による市場一元化を通してグローバル化のイデオロ
ギーとなり、市場原理主義を世界に広めました。その結果、政治が後退する経済
主義的な世界統治が語られもしましたが、ただしこの統治システムは「テロとの
戦争」という超国家的「安全」保障体制を要請していました。そしてわれわれが
現在目の当たりにしているのは、この新たな戦争レジームと新自由主義的統治の
二重の破綻です。付言するなら、経済と軍事のカップリングによって政治をはじ
き出そうとしたこのグローバル世界統治システムとは、植民地支配として展開さ
れた産業化以後の西洋主導の世界化プロセスを、アメリカ的「自由」のイデオロ
ギーによって更新し、永続化するための装置だということです。
けれども、振り返ってみればその端境のころ、つまり1970年代初頭から、産
業・経済主義的社会組成に対する根本的な異論や批判が現れてきていました。す
でにK・ポランニーの市場経済批判がありましたが、N・ジョージェスク=レー
ゲン、I・イリッチらが登場し、正統的経済学(新古典派)や経済主義的ヴィ
ジョンを支えていた「成長神話」が批判されるようになります。フランスではア
ンドレ・ゴルツやフランソワ・パルタンなどが、多様な角度からの批判が展開し
ました。
その流れを受けて、たんに新しい経済学を構想するのではなく、経済学を軸と
した社会科学全般に浸透する「功利主義」そのものを審問して、人間社会を考察
する別の知の方法を人文・社会科学の横断的な共同作業によって練成しようとい
う目的で創設されたのがMAUSSです。いうまでもなくこの命名は、西洋近代の経
済観念に「贈与」の概念で異論を突きつけたM・モースの名にかけられています。
わたしたちの科研グループでは、経済や政治が根本的に問われているこの時期
に、すでに必要な方向に向けて四半世紀の活動を展開してきたMAUSS代表のアラ
ン・カイエ氏を招き、その経験と成果について報告を受けるとともに、日本の関
係者、関心を共有する方がたと議論の機会を作ることにいたしました。
(文責:西谷)
Alain Caillé 主要著作―――――――――――――――――――――――――――――――
Théorie anti-utilitariste de l'action:Fragments d'une sociologie
générale, Editions La Découverte, 2009.
Don, intérêt et désintéressement:Bourdieu, Mauss, Platon et quelques
autres, Editions La Découverte, 2005.
Dé-penser l'économique:Contre le fatalisme, Editions La Découverte, 2004.
Critique de la raison utilitaire, Editions La Découverte, 2003
The World of the Gift, Mcgill Queen’s University Press, 1999.
主催:科学研究費プロジェクト(「戦争・経済・メディアから見るグローバル世 界秩序の複合的研究」(研究代表者:西谷修))
共催:『マルセル・モース研究―社会・交換・組合』(AA研共同研究プロジェクト)
会場提供:東京日仏会館フランス事務局