『ビジネス倫理の論じ方』:目次

目次詳細

序章 倫理はなぜ/いかにビジネスの問題となるのか
佐藤方宣

はじめに
・本書の問い
・ビジネスに倫理を!/ビジネスに倫理を?
1.なぜビジネスの倫理なのか
・政策・制度・法令を問う手前で
・「広義のビジネス倫理」への問い
2.ビジネス倫理をいかに問うのか
・“ビジネス・エシックス”興隆のなかで
・思想史的な視点から
3.ビジネス倫理を問うことの困難
・ビジネスの不道徳(immoral)と非道徳(amoral)
・フリードマン:資本主義“擁護”としてのビジネス倫理批判
・コント=スポンヴィル:資本主義“批判”としてのビジネス倫理批判
4.個別の問題系へ
・各章での論じ方



第1章 企業とビジネス  社会的責任はどう問われたか
佐藤方宣

プロローグ
1.社会的責任をどう問うか:近年の日本における論議から
・社会的責任の過剰と減価
・「そもそも論」の立場:岩井法人論と岩田法人論
・「どうする論」の立場:奥村法人論とドーア法人論
・問いの出自への問いへ
2.社会的責任の出自へ
・「現在」をどこから問うか?
・社会的制度としての株式会社:バーリとミーンズ
・1920〜1930年代アメリカのビジネス・エシックス
・専門職としてのビジネス:ドーナムの社会的責任論
・社会的責任の三つのタイプとは
3.社会的責任論の展開と揺り戻し
・バーリ・ドッド論争
・バーリの転回と社会的背景
・社会的責任からの揺り戻し:バーリとハイエク
・その後の大企業論の社会的責任論:ハイルブローナーのフリードマン批判
・「企業の政治化」へ
4.責任はどう問われるべきか
・出自と来歴を経たのちに
・責任の割り当てと中間組織
・公共的討議と責任
エピローグ


第2章 社会的企業  どこまで何を求めうるか
高橋聡

プロローグ
1.社会的企業とは
・アメリカとヨーロッパの学説
・社会的経済(協同組合、共済、アソシエーション)
・社会的企業論
2.市場の論理で語りうる領域
・ブキャナンのクラブ財理論
・ワルラスのプラン
3.市場の論理を支える領域
・信頼??顔の見える人間関係
・ソーシャル・キャピタルと社会的企業
・連帯感:日常の社交
4.ソーシャル・キャピタルの両義性
エピローグ


第3章 組織と仕事  誰のために働くのか
中澤信彦

プロローグ
1.分業・公共財・フリーライダー
・分業のメリット
・分業のデメリット
・コミュニケーション不全と企業不祥事
・公共財
・フリーライダー
2.働くことの意味
・働くことへの多様なモチベーション
・ドストエフスキー『死の家の記録』
・マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』
・アイデンティティ
3.なぜ働くのか? 誰のために働くのか?
・幸福な人間関係
・他者からの承認
・誰のための仕事?
4.コミュニケーションの結節点としてのリーダー
・仕事の上位目的と下位目的
・組織リーダーの本来の役割
・リーダーではなくコミュニケーターあるいはファシリテーター
5.適正規模の組織
・適正規模の組織を作ることの重要性
・組織の適正規模に関するスミスの見解
6.フェア・プレイを重視する社会
・規制緩和とフェア・プレイ
・コンプライアンス経営とコミュニケーション
エピローグ


第4章 競争と格差  何のために競うのか
太子堂正称

プロローグ
1.「潰しあいとしての競争」を超えて
・勝ち組と負け組
・格差は何が問題か
・競争は卑怯?
・「潰しあい」の場としての競争
・「弱者」が「市場原理主義」の担い手となる
・個人主義と経済原理の奇妙なねじれ
・格差積極的肯定論
2.競争は「強者」のためのものか
・競争は人間にとって悪?
・「利己心」と「奢侈」の肯定
・「富裕の一般化」と「高賃金の経済論」
・限定付の格差の肯定
・競争とは相手を蹴落とすことか?
3.格差と自己意識
・格差の何が問題か
・格差と自己意識
・「成果主義」ははたして競争の原理か
・競争とは競争から「降りる」こと
エピローグ


第5章 消費者主権  お客様は神様か
原谷直樹

プロローグ
1.消費の望ましさとは
・消費の重要性
・消費者とビジネス倫理
・責任主体としての消費者
2.消費者主権という理念
・規範的理念としての消費者主権
・消費者主権は成立するのか?
・ガルブレイスの生産者主権論
・消費者運動と消費者の権利
・消費者政策における消費者の保護と自立
3.消費者主権を問い直す
・ハットの消費者主権論
・消費と投票のアナロジー
・消費者主権の規範性
・消費者主権と選択の自由
・消費者主権とパレート最適
4.消費者は神様なのか
・クレーマーの何が問題なのか?
・「お客様は神様」か?
エピローグ


第6章 食と安全  何がどう問われるのか
板井広明

プロローグ
1.現代における食の問題
・日本の食
・食の安全と安心
2.思想史における「安全」の問題
・安全=セキュリティー
・安全と公開性
・食料と監視のシステム
3.食の倫理:われわれは何を食べるべきか
・南北問題
・食の問われ方
・功利主義と食の倫理
・ヴィーガンの勧め?
エピローグ


第7章 企業と国家  国境を越える責任とは
中山智香子

プロローグ
1.経済思想史が示す国家の位置
・先駆者としてのドイツ歴史学派
・新しい代表としてのアメリカと途上国
2.自由貿易を揺るがす倫理的・社会的責任?
・倫理的・社会的問題と「基準」の位置
・保護主義の仮面としての倫理性?
3.MINAMATAの事例
・社会的責任回避の構造
・グローバル世界におけるMINAMATAの意義
4.民営化再考
・水の商品化が示すもの
エピローグ


参考文献
あとがき